いよいよ「鉄腕アトム」の誕生日が近づいてきた。
「鉄腕アトム」という作品が作られたのは、今から五十二年前──昭和二十六(一九五一)年である。その作品の中の設定として、アトムが生まれたのが二〇〇三年の四月七日ということになっているのである。
二〇〇三年四月七日───
この日、天馬博士の手によって、アトムはまずトビオとしてこの世に誕生することになっている。
実は、白状しておくと、ぼくはアトムが描かれた年に生まれている。昭和二十六年の一月生まれの五十二歳。アトムと年齢が同じということになる。
それにしても、子供の頃はまさか、自分が現実に、アトムの生まれた未来の世界に生きる日が来ようとは思ってもみなかった。
二十一世紀は遙か未来であり、もっとはっきり書いておけば、自分が五十二歳のおっさんになることなど、当時小学生であったぼくは想像さえしていなかったのである。
ところが、今ぼくは現実に五十二歳となり、アトムの生まれた未来世界に生きている。
なんだかとても不思議な気分なのである。
というところで、幾つか近況について記しておきたい。
二〇〇一年の秋に公開された映画『陰陽師』の第二作目が、この春にクランクインした。
主役の安倍晴明は、前回同様野村萬斎さん。源博雅が伊藤英明さん、密虫が今井絵里子さんというのも前回と同じである。
監督もまた前回と同様に滝田洋二郎さんである。
前回は真田広之さんが、晴明の相手役として道尊を演じて下さったのだが、今回、晴明の相手役である謎の人物幻角を演じて下さるのは中井貴一さんである。
美しい男まさりの姫日美子を演じて下さるのが深田恭子さん。
かなり豪華なキャスティングとなった。
ここで、もうひとり、付け加えておきたい人物がいた。
それは、前回出た、検非違使の橘右近(たちばなのうこん)である。
この右近が今回も出る。
前回と同じくこの役を演(や)っていただくことになったのが、元極真空手の世界チャンピオン八巻建弐さんである。
髭などをはやし、衣冠を身につけているので、すぐにはわかりにくいかもしれないが、都をおびやかす・鬼・と対決する武士が、この八巻右近なのである。
八巻さんは、現在アメリカに住んでいて、八巻道という空手道場をやっている。今回は『陰陽師』のためにわざわざアメリカから日本へ来てくれるのである。
毎日ウェイトをやっているので、体重はもう一二〇キロを越えているのではないか。
監督の滝田さんには、
「ぜひ、上半身が裸になるようなシーンを──」
とお願いしたのだが、むずかしいかもしれない。
K-1に出場することには興味がないようだが、ボブ・サップには興味があるようである。
日本人として、外国人のヘビー級ファイターと対等以上に闘えるのは、八巻建弐ひとりくらいだろうと思っているのだが。
というところで、次の話題である。
つい先日──三月九日に、萩尾望都さん原作の舞台『トーマの心臓』を観に行ってきた。
スタジオライフという劇団が、もう何年も前から時おりやっている演目で、機会があったらぜひ観たいと思っていたのだが、萩尾さんが、
「今度またやるので観に来ませんか」
と声をかけて下さったのである。
「ぜひぜひ」
と言って観に行ってきたのだが、観る前は実は、かなり不安であった。
「どういう心がまえで観たらいいんでしょうねえ」
と、萩尾さんに言ったりしていたのである。
だって───
十三歳から十五歳くらいの少年の話であり、しかもその少年というのはみんな外国の少年たちであり、さらには、ヤオイとまでは言わないが、ホモセクシャルの話であり、純情で多感で、哀しく、美しい、すごくいい話なのである。
こちらにはもう決まったイメージができあがっており、漫画以外ではあの世界は成立しにくいのではないかと考えていた。
観終わって、セーフ。
萩尾さんの原作に忠実にやっているのが、これがかえってよかったかもしれない。
オスカー役の笠原浩夫がよかった。
終わってからの打ちあげに誘われていたのだが、『陰陽師』小説連載の原稿がまだ残っていて、これはパス。
今度は、『アメリカン・パイ』を、また別のところで演ることになっているというので、これもしっかり観にゆくつもりでいるのである。
というところで、もうひとつ舞台の話。
実は、歌舞伎座にも行って、三月大歌舞伎を観てきたのである。
夜の部「連獅子(れんじし)」と「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」を観たのだが、「連獅子」の中村勘九郎さんがよかった。
このところ、踊りも芝居も、どんどんよくなっているような気がする。
「与話情浮名横櫛」の方は、与三郎が仁左衛門。蝙蝠安(こうもりやす)が勘九郎、お富が玉三郎という、これ以上はないというキャスティングであった。
ええとこのぼんぼんの与三郎が、切られの与三となって、大変身するのを、仁左衛門がなんとも上手に見せてくれたし、蝙蝠安の勘九郎がまた絶品。ひょうきんなところ、ちょっとコワイところ、だらしがないところ、自在に演じている。
玉三郎のお富がまた、色気がある。
玉三郎の、江戸の町のおかみさん役を、急にもっとたくさん観たくなってしまったではないか。