| 藤門 弘北海道通信 07年10月
ご無沙汰しておりますが、皆さんお元気でご活躍のことと思います。
北海道は約束通り9月1日から秋になって、朝晩はどきっとするぐらい寒かったりします。
久しぶりの通信ですが、相変わらずの農繁期なので今号は思うことのあれこれを「クラシファイ」(三行広告)風に申し述べさせてもらいます。北の辺境でファーマーが吠えている、とのご認識でまったく不満はありません。
<自然ウオッチ>
◆今年のハイライトはなんといっても裏山に営巣したオオタカで、6月下旬からは葉が茂って巣の様子は見えなくなった。しかし7月末になるとヒナが巣立ったようで、一家でピイピイとかしましい。お母さんのピイピイ教育の成果で、ヒナふたつは自立を始め、8月中旬には親離れ。
◆それからずっと幼鳥2羽を毎日眺めてきた。幼鳥だからぼんやりしていて、わが家の屋根や庭木にまでとまってしまう。これで大丈夫なんだろうか、ちゃんと餌(小鳥)を捕獲できるんだろうか、と心配したが、それでも次第にタカらしい姿になっていった。
◆9月に入ってすぐ、2羽の幼鳥が庭のすぐ上をゆったりと旋回して、ぼくはその凛々しい姿に拍手をしたのだが、どうやらこれが別れの挨拶だったらしい。2羽はこれ以降姿を見せなくなった。きっと南の方へ移ったのだろう。今年で3年目になるオオタカ観察であった。
◆春先にはおなじみの鳥が少なくて不安だったが、今年は種数よりも個体数が多い年だった。7月に入った頃から幼鳥がすごくいっぱいいて、時々迷ったチビが道路を歩いていたりする。犬たちはそういう幼鳥を捕まえるのを楽しみにしていて、散歩が大変だった。
◆ブルベリー園を営巣場所に選ぶ鳥が多くて困るのだが、今年はつみとり園にモズが巣を作り、6羽のヒナを育てた。それがなぜか急に1羽に減ったので、一瞬もしかしたらカッコウ?と思ったがどう見てもモズ子なので、ヘビかキツネの仕業だろう。
◆今年はどうも昆虫類が少ない年だったようだ。去年教わったゼフィルスを楽しみにしていたのだが、全然みられなかったし、ハチの類の少ない気がする。ブルベリー最後の頃にはスズメバチが多いのだが、今年は姿がない。
<ニュース・ウォッチ>
◆7月末の参議院選はおもしろかった。ひとまずめでたい民主勝利だが、さてこれからどうなるのか。安陪が辞めて福田が総理になる様相だけど、自民が息を吹き返す前に解散総選挙に追いこめるといいな。それで野党が勝つかどうか勝負どころだけど、勝利して新政権ができたとしても一抹の不安は残る。なにより、必ず巻き起こるであろう反動の嵐がこわい。
◆というような心配は、もしかしたらぼくたちが「政権交代」というものに慣れていないからかも知れない。欧米によくある2大政党制では、時々政権が交代しつつそれぞれに民意を反映する、というようなシステムになっているのだろう。もちろん一応そうなっている、ということでこれにも問題はあるのだろうけど、自民、民主で時々交代しながらやる、というのもありかな。
◆てなこというと、なんだか変に物わかりがよさそうでイヤなんだけど、ひとまず政権交代の実現に期待してみたい。民主党に過大な期待はないんだけど、少なくとも官僚とのやりとりで自民よりはましだろう。ずっと前の管厚生大臣みたいに。
◆結局、公明党がどこまで自民とつきあうか、にかかってるんだろう。公明、創価学会がどうしてこんなに長期に自民と一緒でいられるのか不思議でならない。むしろ民主と連携する方が自然だと思うんだけど、そろそろそういう時期なんじゃないのか。
◆「テロとの戦い」「国際貢献」なんてよく言うけど、あれって結局「イスラエルとそれを支持するアメリカ対アラブ世界との戦い」のことでしょ。極東の島国日本は両方と適当に仲良くするのが得策なのであって、これこそ「国益」というものだ。アメリカに追随してテロの対象になることを自ら選ぶ必要はないよね。
◆新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原発事故は不気味だった。地震被害はたいしたことないのに、原発はすごい被害で放射能漏れまで起きている。ないはずの活断層が実はいっぱいあったりして、怖いなあ。ぼくの住む近くには北電泊原発があって、万一事故があったら大変だ。
◆原発には基本的に反対なのだが、では対案を出せ、と必ず反論される。自然エネルギーを、というとまた現実性がない、と反論されるのだが、この代替エネルギーについては全然研究されていないのだ。原子力予算は膨大なのに、クリーン・エネルギー研究はまったく無視されている、という事実。
◆最近温暖化防止の省エネがよく宣伝されるけど、まず日本中にあまねく分布して汚い町をますます汚くしている自動販売機を一掃したらどうだろう。それぞれに結構電気を使っているはずで、日本中合わせればそれだけで原発一基分ぐらいの電力を節約できるだろう。自動販売機一掃運動、誰か始めてくれないか。
◆話は飛ぶけど、町田康が布袋寅泰に殴られて警察に被害届けを提出、というニュースには驚いた。町田康ってそんな程度だったのか。殴った殴られたなんていうのは文士の間ではいくらでもあるし、ミュージシャンならもっと多いはず。学校で先生にいいつけるみたいな町田康は最低。見損なったね。
◆山口県で起きた母子殺害事件で当時少年だった被告の裁判が注目されている。被害者の夫はヒステリックに死刑を求め続け、マスコミもこれを支持する論調だ。安田義弘弁護士を始めとする弁護団はまるで悪者扱いだが、ぼくは死刑に反対する立場を堅持しようと思うし、マスコミ報道には否定的だ。
<スポーツ観戦>
◆相変わらず横浜ベイスターズを応援してるけど、前半にはやや希望が持てたが、このところはもう絶望的。快速160キロのクルーンまで打たれるようになって、一体どうしたらいいんだろう。いい選手をどんどん手放す球団運営に問題あり、と思ってる。
◆そんなベイスターズを応援にはるばる横浜までいってきた。久しぶりの横浜スタジアムはしかしよかったなあ。新しいドーム球場とは違って観客席とグランドが近いから、前の方の席に座ると本当に目の前でプレーが展開する。内野席にはネットがなくて、臨場感満点だった。この日は中日戦だったけど快勝。横浜のシューマイは少年時代の味がした。
◆ラグビーのワールドカップがいよいよ開幕。といっても参加国の中で日本はおそらく最下位だと思う。それはそれで仕方のないことなのに、無理矢理盛り上げようとする放送にはしらける。初戦の対オーストラリアは91対3というこれ以上ない、という負けっぷりだったが、「すごいタックルです!」「日本のディフェンスは本当にすごい!」みたいなことばかり叫んでいる。「ディフェンスがいいからトライは端ばかりだ」だって。
◆スポーツ中継のナショナリズムには本当に辟易するし、なるべく見ないようにするけど、ラグビーぐらい冷静にやってくれないかなあ。世界最弱だっていいじゃないの。中継の第一声が「日本の皆さん!共に闘いましょう!」の絶叫だから困る。「日本のみなさん魂を送って下さい!」なんて、まるで戦時中の一億火の玉みたいだ。
◆日本のラグビーは鎖国した方がいいかも知れない。国内でやってる分には結構おもしろいし、高校、大学、社会人の各リーグを楽しく観戦できる。国際試合になると必ず負けるし、その割にナショナリズム放送になるからいけないのだ。「ジャパン!ジャパン!」とくりかえすけど、監督もコーチも外人だし出場選手も主要ポジションは助っ人外人なんだから可笑しい。
◆いっそ全部お雇い外人でチームを作ればどうだろう。5人だ6人などと小さいことをいわずに全部外人の日本代表にしてしまう。各国の有力選手を金の力で思い切り集めて「ジャパン」にすれば、少なくとも予選は突破できるだろう。監督だけ日本人にして、「平尾ジャパン」とか「向井ジャパン」と勝手に呼べばいい。この外人チームを「ニッポン、チャチャチャ!」と応援する「国辱的ナショナリズム」のアイロニー。見たいなあ。
<読書その他>
◆春に目的地変更をしてしまったボルネオが再度浮上してきて、もう一度関連書を読み始めた。今回は大作がふたつもあって大変。そのひとつは息子から回ってきた『ドードーの歌』上下巻。合わせて900ページの大部で、テーマは「島の生物地理学」。話があちこちに飛ぶのでついて行くのに苦労するが、冒頭のあたりでマレー諸島とA.R.ウォーレスが出てくる。
◆ウォーレスはイギリスの生物学者ないしは標本商のような人で、バリ島のあたりにある「ウォーレス線」で名前を残している。北海道と本州の間にあるブラキストン線のような生物学的な境界線のことだ。ウォーレスはまた「ダーウィンに消された男」ともいわれている。進化論を独自の実践的な立場から考え、それを手紙で全部ダーウィンに提供した。追い越されそうなダーウィンは大急ぎで『種の起源』を書いたが、ウォーレスのことには一切触れなかった。ダーウィンはインチキだ、と『ドードーの歌』はいっている。
◆ダーウィンは上流階級の人だったが、ウオーレスは中産階級だった。ウォーレスの友人にベイツという人がいて、ふたりは最初アマゾンで動植物を集める。ベイツは「ベイツ型擬態」という名前を残しているが、ウォーレスは後にアジアに転じた。
◆そのウォーレスが書いたのが『マレー諸島』で、翻訳が出ている。これがまたすごくて、上下二段組で700ページ。この地方に長く滞在し、周辺を旅したウォーレスの記録だ。ボルネオ旅行のようなタイミングがないと読めない本だから、この機に読破してやろうと思っている。
◆ボルネオ旅行は10月の終わり頃に予定しているが、旅の相棒は小学館の宮川君。長年の友人だが彼の専門は蝶だ。ぼくは鳥で彼は蝶。専門は違うがなにしろ残された最後の熱帯雨林だ、鳥も蝶もきっといっぱいいるに違いない。そう勝手に決めて出かけることにした。
◆といってもごく短い旅なので、「今回は偵察ね」ということにしている。オランウータンを始めとした熱帯の動植物鳥類昆虫は虫類の諸君にざっとご挨拶をして回り、次回に備えよう、という作戦。宮川君はなかなかの読書家でありインテリだから楽しいのだが、早くも「標本商の話なら『補虫網の円光』というのがありますね」などとまたひとつ課題図書を示すのであった。
さてさて、夏の喧噪が一段落したわが農園であるが、これから冬に向かって仕事がいっぱいある。北ではこういう風に季節に追われるので周囲はいつもきちんと片づき、整然としているのだろう。季節の重心は圧倒的に冬にあって、だから暮らしの重心もそこに置かざるを得ない。夏の余勢をかってもうひと働きし、冬に備えよう。
ブルベリー園の冬囲いが終わる10月末、赤道直下に出かけてオランウータン君と会おう。オランは人、ウータンは森のことらしい。一頭、二頭ではなく、一人、二人と数えるのだそうだ。
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Hiroshi Fujikado
藤門 弘
http://www.arisfarm.com
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